2018.5.07故人様の最期のお顔とお別れすること、その大切さを伝えていきたい
みんながきちんとお別れできるよう棺の蓋を閉めるタイミングを見極める
ご葬儀で、出棺前のお花入れの後に蓋締めを任されることがあります。
この作業は一見なんでもないと思われがちですが、この蓋を閉めるタイミングを見極めることは、私の中ではとても重要な役目だと思っています。
お花入れの際、いろんなお別れのカタチを目にします。蓋を閉める前の段階で棺から離れられない人、逆に棺に近づこうとしない人、その2つのカタチがあります。
棺に集まっていると、比較的みなさん集まりやすいのか棺の周囲にいらっしゃるのですが、1人が遠巻きに見ていると、周りの皆さんも同じように遠巻きに見ています。
そんな「お別れをしたいけど、近づいていいのか分からない」という雰囲気で近づけずにいらっしゃる方には「どうぞ皆さま、最後にお別れの言葉をお掛けください」
と、故人様の顔を見たり話しかけたりできやすいように促しています。
逆に棺から離れない場合は、お別れの最中にも感情の波というか、気持ちにキリがつき落ち着くタイミングというものがあるので、それを見極めて蓋締めの案内をしています。
記憶に残らないけど心に刻まれる、心が震えたお花入れの瞬間
あるお葬式のお花入れの場面をお話します。
故人様は若くして亡くなられ、残された奥様との間には3歳の娘さまと1歳になったばかりの息子さまがいらっしゃいました。
2人の幼子は、まだ自分の父親になにが起きたのか、もちろん理解できません。そんな中式は進行していきました。
娘さまは喪主であるお母さまの膝の上、息子さまは眠たくてぐずったので叔母さまに抱かれて会場を後にしました。
そして、出棺前のお花入れの時がやってきました。
故人様を偲ぶため、ご遺族の方をはじめ多くのご友人の方が棺を囲み、涙を流しお声がけしながらお花を添えておりました。
その光景は、故人様がどれだけ多くの方に愛されていたか分かるほどに、そのお別れを惜しむ声が会場に響いておりました。
そしてタイミングを見て、そろそろ蓋に手をかけ締めようとした瞬間、
「待って〜!」
と叫ぶ声が聞こえてきたのです。
声の主に目を向けると、席を外された叔母さまが目を覚ました故人様の息子さまを抱っこして小走りでかけてきたのです。息子さまにパパの最期のお顔を見せてあげたかったんだと思います。
目を覚まされた息子さまはしっかりとパパを見ているようでした。
叔母さまが最後のお花を息子さまの手に握らせ、それを棺の中に添えて蓋を閉じました。
まだほんの1歳です。
成長していく過程で、彼の記憶にはその光景はないかもしれない。
でも最期にご対面したことは息子さまにとってだけではなく、故人様とそのご遺族にとっても大きな意味があったのではないでしょうか。
私自身も今年の2月に祖母を亡くしました。
葬儀の後出棺し、火葬棟に到着後、時間が迫ってたというのもありますが、棺の中の祖母の顔をまったく見ることができませんでした。
自分の経験と自分が出会った光景をみさせていただいて、改めて出棺前の蓋閉めのタイミングというのは、葬儀においてすごく大切だなと感じております。
場の雰囲気を読み、ちゃんと区切りが付けられる様にと常に心かげています。
お葬式は一見、どれも同じように見えてしまうかもしれません。
しかし、100人いれば100通りの「想い」があり、決してどれ一つ同じお葬式はないのです。
私たち大の葬祭スタッフは、ご家族の大切な「想い」をしっかり感じとり、つなぐことを使命としています。
「想いを大切にする。エピソード」では、お葬式のワンシーンから生まれた、大切な想い出のストーリーをご紹介させていただきます。