想いを大切にする。エピソード

想いを大切にする。エピソード

2018.11.08思い出の味が運んだ【家族葬】という、口福のお別れ

お葬式は一見、どれも同じように見えてしまうかもしれません。

 

しかし、100人いれば100通りの「想い」があり、決してどれ一つ同じお葬式はないのです。

 

私たち大の葬祭スタッフは、ご家族の大切な「想い」をしっかり感じとり、つなぐことを使命としています。

 

「想いを大切にする。エピソード」では、お葬式のワンシーンから生まれた、大切な想い出のストーリーをご紹介させていただきます。

 

家族の会話から思い出した、故人様の好きだったあの食べ物

 

 

想いを大切にする。エピソードNo21-1

 

家族葬をされたご遺族さまのお話です。

 

故人様は、享年94歳の大往生されたお母様。お母様のご兄弟やご友人は高齢のため、入院をしていたり施設に入居していたりで、「なかなかご足労をおかけするのは…」と、喪主を務めるご長男は考慮され、身近なご親族だけをお呼びすることに決めました。

そして集まったのは、10名の方でした。

 

 

通常、ご葬儀は親戚一同が集まります。久しぶりにお会いする方も多いため、悲しみを分かち合いながら近況を報告し合ったり、ご一族の結束力が高まる日でもあると個人的には感じることが多いです。

 

お集まりになった皆様は、控え室にて一夜を故人様と過ごされます。

その際には手づくりのおにぎりや煮物、スーパーで買ってきたオードブルなどを広げ、お酒も交えながら故人様に所縁のあるエピソードに花を咲かせ、夜通しともにするのです。

 

そしてお線香の火を絶やさぬよう、故人様のご冥福をしっかりとお祈りし、葬儀の朝を迎えられるようにしています。

 

今回は家族葬ということもあり、

静かに秋の夕暮れを迎えておられました。

 

「夕ご飯にしましょう」と、誰からともなく、おにぎりや煮物など持ち寄ったものをテーブルに広げていきます。そんなとき故人様の妹さんが一言こうつぶやきました。

 

「そう言えば、チエちゃんはいつも“あの”ごま豆腐を食べよったなぁ」。

 

それを聞いたご長男はハッとした表情で、

 

「そう言えばお母ちゃん、アレ好きやったから、よくうちの食卓にも出てきたわ。アレなぁ、昔は家の近くにお店があって、ざるを持ってよう買いに行かされよったわ」と付け足しました。

 

「“あの”ごま豆腐、最近は喉に詰まるかもしれないからって施設で食べさせてもらえんかったけんね。食べたかったやろうなぁ」。

 

それを聞いた長男の奥様が「ちょっと買い物行ってくるわぁ!」と、慌ててサンダルを履いて出て行かれたのです。

 

そして10分後、戻ってきた奥様の手にはスーパーの袋。

「これやろ? “あの”ごま豆腐」と7パックのごま豆腐を指差し、奥様はにっこり笑ったのです。

 

ごま豆腐をきっかけに、スタッフも一緒に会食?

 

想いを大切にする。エピソードNo21-2

 

実はこの地域の人であれば、誰もが知っている有名なごま豆腐というものがあります。

世代を超えて受け継がれるご当地グルメというか、郷土料理に近い存在と言った方がしっくりくるかもしれません。

 

現在は工場も拡大され、今ある場所に移転し、スーパーに卸すようになりました。

評判のよいそのごま豆腐は、地域のみんなに愛されています。

スーパーのお豆腐コーナーに行くと自然とそのごま豆腐を探し、陳列棚にちょこんと並べられているのを見ると無性に安堵するのを思い出されます。

 

そうして、1パックに2個入ったごま豆腐の1個を皿にのせ、故人様へお供えしました。残りの6パックと半分はみんなで分けます。

 

1個ずつお皿に盛っていくと、13皿できました。ご遺族分の10個を配り終え、残り3個をテーブルの脇へ置き、私たちスタッフのほうを向いて、

 

「ねぇ一緒にいただだかない? ほら、私たち人数少ないし、もしよかったらやけど。若い人たちが入ってくれると華やぐやろ?」とお声を掛けてくださったのです。

 

しめやかなお席ですしご遠慮させていただくのが当然という思いもあり、最初はお断りしていたのですが、実はあまりにもテーブルに並んだお料理が美味しそうだったのと、比較的業務もゆっくりした夜だったこと、そして何を隠そう私はそのごま豆腐のファンだったということもあり、無遠慮かなとは思いつつも同席させていただきました。

 

地元密着という言葉を再確認。味わい深かった家族葬

想いを大切にする。エピソードNo.21-3

 

つるんとしたごま豆腐を慎重に箸にのせ、とろりとした甘辛いタレを絡めながら口に運びます。皆、その安定の弾力と喉越しに舌鼓を打ちました。

 

「美味しいものを食べると幸せな気分になるのはお通夜の日も一緒やね。最後にこんな気分にさせてくれたのはチエちゃんのおかげね〜」と、みんなで笑いあいました。

結果的に、とても賑やかな夜を過ごせたことは言うまでもありません。

 

悲しい気持ちのなかでも、少しの晴れやかな気持ちを味わえるのは、人数ではなく一人ひとりの心の持ちようなのだと気付かされました。

 

無理に楽しくしなくてもいいと思います。けれど故人様にまつわる記憶の糸を手繰っていくことで、忘れかけていた素敵な思い出が蘇ってくるとすれば、それはもう微笑ましいことに、ほかならないのだと感じております。

 

今回、このような素晴らしい時間を「舌」で共有できたのは、地元の葬儀社だからこそなのかもしれません。

ご遺族さまとスタッフのお互いの想いが“あの”ごま豆腐で通じ合えたのは、まさに大の葬祭らしさの現れだと感じております。